社員紹介 開発研究部門

大学時代には柑橘類やイネの病理学を研究し、きのことは縁がなかった。ホクトを知り、きのこの研究から生産、販売まで自社で一貫して行っている点に強く惹かれた。種苗会社などとも違う事業内容に魅力と可能性を感じ、研究職として入社を決めた。

食卓まで届く新品種は10年に1つ?
入社してポルチーニの栽培研究を担当した後、2022年からエリンギの新品種開発に関わっています。いま店頭で販売しているエリンギよりも美味しく、見映えが良く、栽培しやすい品種を生み出すことが目標です。そのために優良な特徴を持つ「親」同士を交配させて、年間2,000株を超える菌株を作出して、条件に合う品種を厳選します。こうして選抜された品種について栽培試験を行い、品質や収量性などが安定しているものを新しい品種として農林水産省に登録します。しかし、登録された品種がすぐに売場に並ぶわけではありません。次は研究所内での規模を拡大した試験やきのこ生産センターでの栽培試験が待っています。商品化が決定されて皆様の食卓に届く品種は、10年に1つあるかないかという、とても厳しい世界です。

失敗は「うまくいかない方法の発見」。
入社から9年間は、ポルチーニの栽培研究を担当していました。当社ではポルチーニの栽培研究は1990年代にスタートしましたが、20年近くは大きな成果を出せずにいたのです。私が担当してからも試験がうまくいかないことが多かったですが、それは失敗ではなく「うまくいかない方法を発見した」と前向きに捉えていました。きのこハンターの異名を持つ上司が採取してきてくれたポルチーニの中に素晴らしい菌株がありました。その菌株を使用して入社3年目には水耕栽培に成功し、栽培方法の特許を取得できました。さらには試行錯誤を続けて菌床栽培にも成功することができました。もちろん私一人の力ではなく、上司やチームのメンバーの協力、菌株と運に恵まれたことによって成し遂げられました。このように入社してすぐに成功体験が続いたことは、うれしかったと同時に仕事へのやりがいを実感できました。

予測できないのがきのこ栽培の面白さ。
大学の研究は植物病理学だったので、直接仕事に生きているものではありません。でも、研究に取り組む姿勢が身についたと思っています。化学や物理と違って、きのこに携わっていると突然変異など予測のつかないことが多々あります。でも、それがきのこ栽培の面白さです。学生時代の研究も失敗ばかりでしたが、「簡単に成功できたら誰でもノーベル賞を取れる」という恩師の言葉を思い出しながら、どんな仕事においても失敗を恐れずに、挑戦し続けてきました。以前、きのこが出す揮発性物質について調べていたら、合成の過程で最初に働く酵素が学生時代に研究していた酵素と同じことを知りました。こうしてきのこに関係ない当時の知識が、思わぬところで役立つこともあるのが面白いところだと思います。

研究者の視点で会社経営に関わりたい。
ホクトに入社したのは、育種に興味を持ったからです。いま、エリンギの新品種開発を担当するなかで、育種の面白さや狙った菌株をつくることの難しさを実感しています。大学の基礎研究と違って、企業で行う研究は事業の利益を目標にして進められ、その結果として社会に新しい価値をもたらし、豊かな暮らしを実現する力になる。そこに大きなやりがいと喜びを感じています。将来の夢は、研究者としての立場から経営に関わっていくことです。最近、会社を育てる経営の面白さに気付いて、簿記や財務の勉強を始めました。研究でも経営でも、自分の仕事が会社の利益や発展に貢献して、「宍戸が頑張ったからここまでこれた」と評価されるような存在を目指しています。

研究職はインドア派だと思われがちですが、研究所のメンバーたちと夏は登山に、冬はスノーボードなどアクティブに楽しんでいます。コロナ禍の影響もあって、4年ほど前からメンバーと畑を借りて野菜の栽培をしています。最近はエリンギに夢中で栽培は手伝わず、収穫した野菜を食べる専門です。

SCHEDULE

8:30
出社。スケジュールとメールを確認して研究室の掃除。
9:00
クリーンベンチでの作業。
12:00
昼食。天気のいい日は研究所の中庭で食べる。
13:00
試験データのまとめや報告書作成などデスクワーク。
15:30
チームミーティングで進捗状況を確認。
16:30
試験中のきのこの様子を確認。
17:00
試験計画を立てる。
18:00
退社。

※試験で作出したきのこの収穫がある日は、お昼休憩をはさんで9:00〜16:00まで収量や形態的特徴のデータを取得することもあります。

OFF TIME

平日も休日もオフタイムのほとんどを息子と一緒に過ごします。公園で遊ぶのが大好きなので、息子は手早く出かける準備を済ませて、私の帽子を持ってきては早く行こうと急かしてきます。子どもの成長は本当に早く、驚かされたり刺激をもらったりの連続です。

CAREER STEP

入社1年目

開発研究課へ配属
ポルチーニの栽培研究を担当。

入社3年目

ポルチーニの水耕栽培に成功
水耕栽培によるポルチーニの安定生産に成功。特許を出願し、日本きのこ学会でポスターによる発表を行い、ポスター賞を受賞。

入社7年目

ポルチーニの栽培方法が特許登録
ポルチーニの栽培研究を担当。

入社10年目

エリンギ新品種開発を担当
エリンギ新品種開発の前任者が産休・育休に入ったため担当を引き継ぐ。新品種の品種登録に向けて拡大試験を実施。翌年に品種登録出願。

入社12年目

エリンギ新品種として登録
エリンギ新品種が品種登録される。より優れた品種を開発するために、研究を継続中。
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